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| (写真提供/松竹株式会社) |
春の観光祭の「投扇興の集い」の時に参加者に配布されるパンフレットには、家元就任時のいきさつ、投扇興との縁などをご自身がつづられた文が毎年掲載されます。それによると、歌舞伎界では其扇流の発足より以前、投扇興が大流行し、大変に凝った時期があったとのこと。
「ミニチュアの破風(はふ)作りの土俵をしつらえ、真ん中に的台を置き、行司役は相撲の行司と同じ衣装を身にまとい、軍配をもって極手(きまりて)をつげました。また、出場する人々はそれぞれに力士名を持ち、上位の力士は小さな化粧廻を作り、それを手首にまいて投扇興に興じていたと聞いております。」
と、当時の模様を紹介されています。
「其扇流の由来」にも書きましたが、おそらく昭和10年頃のことだったのでしょう。その時の写真や、当時を知る方々の証言から、その頃までは伝えられていた投扇興の遊び方が再現され、現在の其扇流の形ができあがっていったわけです。
毎年行なわれている春の大会では、準決勝までは試合数が多いため、会員諸氏による自主的な試合運営が行なわれますが、個人戦と団体戦の決勝戦では、家元がおっしゃっているような凝った形式にのっとって試合が行なわれます。
投扇興のお道具も製造・販売している「荒井文扇堂」の社長でもあられる其扇庵紫蝶殿が羽織袴に身を包み、相撲の行司が持つ軍配を手に持って、おごそかに銘定行司を務めてくださり、投者は、1年のうちでもこの大会の決勝戦でしか使用されないミニチュアの土俵に乗せられた、木枕と蝶(的)に向かって扇を投げるのです。
まだ見たことがない方、次の機会にはぜひ浅草寺においでください。正式に日時が決まったら、このホームページでもお知らせいたします。
2009年7月17日追記:
「ぴったんこカンカン」にご子息の市川海老蔵さんが登場し、京都で投扇興に興じておられたそうです(私は見逃してしまいました…)。
歌舞伎俳優の中では、家元以外にも、中村勘九郎(2005年から18代目中村勘三郎を襲名)さん・勘太郎さん親子がご自宅で親子対決を楽しんでいらっしゃるという話を聞いたことがありますし、中村時蔵さんと中村福助さんはかなりお強いらしいです。時蔵さんは、ファンの方を招いて投扇興を楽しむ会を開いたりしており、私の友人も先日参加してきたそうです。
2004年4月11日追記:
今年の春の大会の個人戦の部に、中村時蔵丈が参加されました。私も行司の一人として間近で拝見することができましたが、非常に柔らかいフォームで、優雅に投げていらっしゃいました。
そして、その実力を遺憾なく発揮され、なんとベスト8に進出されました。ぜひまた来年以降も参加していただきたいです。
2006年12月29日追記:
「関西・歌舞伎を愛する会」によるインタビューで、投扇興について語っておられます。
その中村時蔵さんの他、片岡仁左衛門さんもかつて春の伝法院の大会にゲストとしていらしたことがあるそうです。また、尾上菊五郎さんも坂東三津五郎さんも投扇興をたしなまれていると伺いました。
現在、一般の会員と家元のつながりと言うと、初段を許された時に与えられる「名取りの銘」くらいしかなく、私個人も、まだ家元にはお目にかかったことはありませんので、春の大会にぜひお越し頂ければと願っています。
2013年2月4日追記:
2013年2月3日午後9時59分、肺炎のため66歳で逝去されました。謹んでお悔やみ申し上げます。
※ 2019年11月9日現在、其扇流の家元は空席となっています。
◆市川團十郎(いちかわ・だんじゅうろう)◆
江戸歌舞伎(荒事)の創始者であり代々名優を輩出している、市川團十郎家の十二代目。昭和21年8月6日、美貌の人気役者だった十一代目團十郎(昭和40年11月没)の長男として生まれる。本名・堀越夏雄。
昭和28年10月、「市川夏雄」の名で、歌舞伎座「大徳寺」三法師で初舞台を踏む。33年5月歌舞伎座「風薫鞍馬彩」牛若丸で六代目市川新之助、44年11月歌舞伎座「助六」、「勧進帳」富樫で十代目市川海老蔵を襲名。60年4〜6月歌舞伎座「勧進帳」弁慶、「助六」助六、「鳴神」鳴神上人、「暫」鎌倉権五郎などで十二代目市川團十郎を襲名した。
日大芸術学部卒。56年4月「けいせい浜真砂」三二五六七で国立劇場優秀賞、61年松尾芸能大賞、63年に日本芸術院賞受賞。
隈取の映える大きな目、おおらかな芸風で荒事の正当な後継者として迫力のある舞台を見せる。歌舞伎十八番の演目や、「菅原伝授手習鑑・寺子屋」松王丸などの時代物、「与話情浮名横櫛」与三郎などの世話物、いずれもこなす。
屋号は成田屋、定紋は三升、替紋は杏葉牡丹。
(ワニ文庫「歌舞伎絢爛ハンドブック」を参照させて頂きました)
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このページに掲載の市川團十郎丈のお写真は、松竹株式会社ならびに社団法人・日本俳優協会の許諾を頂き、正規の使用料を支払って使わせて頂いております。転載は固くお断りいたします。