「字」とは蝶(的)のこと。すなわち、落ちた扇をすみやかにどけて的を元通り枕の上に乗せる役目です。試合をする場合は、人数が少なければ行司が兼任することもできますが、正式には2人の投者と銘定行司、字扇取役、記録取役と、全部で5人が必要になります。
座っている位置が枕に近すぎると扇が落ちた時に邪魔になります。銘定行司と字扇取役が座る座布団の位置は、扇を開いた幅の1.5倍以上は、枕から離すようにしてください。
そうは言っても、遠すぎると今度は拾うのが大変になります。また行司の方は、薄雲などの微妙な判定のために枕の上から見る時、わざわざ座布団から立ち上がったり、毛氈の上を歩いたりするのは見苦しくなりますので、せいぜいヒザ立ちで済むようにした方が望ましいです。
行司と字扇取役の座る座布団を置く際には、そういったことを念頭に置いてください。
これだけなら何しろ単純な仕事なので、大きな大会などでは人手が足りない場合は観客の方にお願いすることもあります。しかし、本来はもう少し大事な役目も負っています。
其扇流のルールでは、投者は投げる際にヒザが座布団より前に出てはいけないとか、お尻がかかとから浮いてはいけないとされているのですが、それをチェックするのは字扇取役の仕事なのです。というのは、行司は常に枕と蝶に注目していなければならないため、投者の方などよそ見しているわけにはいかないからです。字扇取役がチェックして違反があれば行司に知らせ、その後で行司が注意するという手順になります。
ただ、高齢の方などで脚を悪くされていて、正座の姿勢を保つために「合引(あいびき:お尻の下に敷く小さな椅子)」を使用される方もいらっしゃいます。その場合にうっかり「お尻が浮いてます」などと注意して気分を害させてしまうことのないように注意してください。
(脅かすわけではありませんが、特に大きな大会では日本舞踊の大家の方なども参加されることがあります。くれぐれも失礼のないよう、お互い気を付けましょう。)