構え方と投げ方

扇の持ち方については、「投扇興とは?」のコーナーをご参照ください。持ち方の方は「規定」というのは特にないのですが、構え方にはルールというか作法があります。

このように、まず座布団の上に正座をすること。慣れないうちは足がしびれて大変かもしれませんが、試合に要する時間は数分程度ですから、そのうち慣れてしまいます。
(むしろ、正座しっぱなしの銘定行司や字扇取役が大変なのです。)

特に関西の流派では、「前屈みになってはいけない」とされていることが多いのですが、そういうところでは投者と的との距離も短い(たいていは、閉じた扇4本分などとされている)のが普通です。
其扇流では、他の流派と違って的までの距離が非常に長いため、前屈みになって腕もある程度伸ばし、距離を稼ぐことは許されます。
となると、身長(→座高?腕の長さ?)が高い方が有利なのではないか…?と思いがちですが、今までの経験ではあまり関係ありません。身長190cmの、しかも優勝歴のあるような達人が投げても、届かない時は届きません(笑)。
右手の位置はそのまま前に伸ばしてもいいですが、狙いを定めるためにも、やはり体の中心に合わせるとよいでしょう。扇を持たない方の左手は必ずヒザか太ももに置いてください(左利きの場合は逆になりますね)。

ただし、座布団の位置は試合前に枕の位置から計測して決められているため、その前のヘリからヒザが出てはいけません。また、お尻がかかとから浮いてもいけません(これを守らない人が多いのです)。
この2点については、試合では厳しくチェックされます。銘定行司は枕と蝶を凝視していなければならないため、投者の姿勢を観察して指摘するのは字扇取役の仕事です。「ただ落ちた蝶と扇を拾ってまた元に戻せばいい」と漫然とこなしていてはいけません。
それと、あらかじめ置かれた座布団の位置は、投者は勝手にずらしてはいけません。サウスポーの方がたまに横にずらしていることがありますが、あまり好ましいことではありません。距離を稼ぐために露骨に前にずらす人はさすがにいないはずですが、横であっても勝手にずらしてるのを初心者が見たら「別にいいのかな」と思われてしまうかもしれませんから、お互い気を付けましょう。

あと、「どこを狙うか」ですが、これも人によってまちまちです。私の場合は、やや蝶の上の方を狙うようにしていた時期もありましたが、蝶を見てしまうと余計な力が入るものなので、あえて枕の下の方や、もっと手前の方を見たり、あるいは目をつぶってしまったり、いろいろ試行錯誤しました。
練習を積むことによって、自分に合った位置を見つけてください。


さて、構えが決まり、狙いが定まったらいよいよ投げるわけですが、投げる前にあまり手首を引かない方がいいようです。ただ、全く引かないというのは最初はイメージがつかみにくいのと、扇の飛びが早くなりすぎることもあるので、ちょっとだけ引いた方がいい場合もあります。ここらへんは人それぞれです。

構えた位置から、手首のスナップをきかせて軽く前に押し出すような感じで投げます。
すると、扇は要を中心にクルッと半回転し、要を前方に向けて滑空していきます。この様子につきましては、「投扇興とは?」のコーナーに(擬似)連続写真を載せましたので、ご参照ください。
うまくひっくり返らないと、扇が途中で失速してしまい、蝶まではとても届きません。最初はとにかく的に届かせることが大事なので、まずはうまく扇が回転して飛んでいくように練習しましょう。
「押し出す」と書きましたが、それは意識しない方がいいです。はっきり押し出してしまうと、扇があおられて、やはり途中で失速してしまうからです。
しかし、全く手首のスナップだけで投げるというのもあまりうまい具合にいかないものでして、そこらへんは練習によって加減をつかむしかありません。

飛ぶようになれば、あとは手の位置の微調整によってだんだん確実に当たるようになってきます。
すると今度は、「花散里につき1点」ばかりなのが不満に思えてくるでしょう。そこからがいよいよ大変なところであり、また練習しがいがあるところなのです。
技の種類を見ているとわかるように、「扇が枕の周辺にうまく落ちる」ようになると、おのずと得点も高くなってきます。そのまま投げたのでは向こうに飛んでってしまう扇を、いかに上手に的のあたりで失速させて的とからめるか。ここから後は練習あるのみです。私にも説明しかねる…というより、私もまだ練習を重ねている段階ですから。


それとコツリ(−1点)を恐れないことが大事です。少なくとも真直ぐに飛んでるし、要(かなめ)がまともに前を向いている訳ですから。後は調整しだいでまともな飛び筋になり、扇が立ったり蝶が乗ったりと得点が高くなってきます。
勝負の上では箱にかすりもしない手習(無点)より痛いわけですが、例会で練習している分には、いくらでも(?)遠慮なく当ててください。
逆に、扇が蝶を飛び越えたからと言って、安易に構えを上下させないことも大事です。

自前で扇を購入して練習しているとすぐにわかることですが、扇5本にはそれぞれクセがあるものです。
本来、扇というのは構造上、投げてみると右にそれてしまうのが当たり前なのだそうです。そこで、構えた時に微妙に手首の角度を調整してまっすぐ飛ぶようにしてやるわけですが、扇によっては逆に左にそれるようなものもあったりします。
また左右だけでなく、飛びすぎたり失速が早かったりということもありますので、自分の扇であるからには何度も投げ込んで、それぞれのクセを覚えてしまうこと。これだけで試合での得点は全然違ってきます。

ここで、以前私が聞いた其扇庵夢蝶先生からのアドバイスをご紹介します。

まぁこれは、「試合に勝つ」ことを重視した考えで、「雅びな遊びを楽しむ」だけならそんなに神経を使うことでもないのですが、其扇流は「競技」という側面での楽しみ方も満喫させてくれるところなので、そういうのがお好きな方は遠慮することはありません。
かくいう私もそうですし、振興会の方々(夢蝶先生を含む)もけっこうそういうタイプがいらっしゃいます。「メンタルなスポーツ」という表現をされたことも、その現われでしょう。
どんどん精進して名人級の腕前になってください。