東都浅草投扇興保存振興会の例会は、奇数月の月末頃の平日夜に行なわれます。大相撲の本場所の1週間後くらい、と覚えておくとよいでしょう。ただし1998年から、11月だけは休日開催で規模の大きい大会が行なわれます。
場所は、浅草の雷門から仲見世通りに入って、浅草寺のさらに向こう、言問(こととい)通り沿いの「雷5656(かみなりごろごろ)会館」のすぐ近くにある、「浅草三業会館(浅草見番)」の2階の大広間です。(*)

なお、雷5656会館というのは雷おこし本舗の株式会社常盤堂の劇場です。道に迷ったら、地元の人でもわかる人が少ないかもしれない見番をいきなり聞くよりまず、雷5656会館を目指しましょう。
注)雷5656会館で投扇興をやっているわけではありませんので、お間違えのないように!(^_^;)
※浅草見番は老朽化のため2025年9月を最後に使用できなくなり、2026年1月の例会は初めて台東区雷門区民館の和室で行なわれました。
会場はまだ固定されたわけではなく、今後しばらくは変更される可能性があります(2026/1/31現在)。
板の間に、広い緋毛氈(ひもうせん・フェルト地)を敷くのですが、すでに枕や座布団の位置がわかるように目印がつけられているため、準備はすぐにできるようになっています。早めについたら、なるべく準備を手伝いましょう。
この大きな緋毛氈の中央に枕を置き、投者2名のための座布団をまず敷き、枕をはさんで両脇に銘定行司と字扇取役の座布団を置きます。さらに、行司の左後ろに座卓と座布団を置き、記録取役の席を作ります。

ちなみに、この枕は何種類か用意されていますが、この写真の席で使っている枕は横四面が四色に分けられています。これは、大相撲の土俵の上の房と同じく四神(青龍=東、白虎=西、朱雀=南、玄武=北)を表わしており、試合の時にはそれぞれが対応する面を東西南北に向けるのが正式だそうです。さすがにそこまで気を使ったことはありませんが(^_^;)。

ほか、浅草にゆかりの深い芝居文字である「勘亭流」で継承者竹柴蟹助氏の筆による文字が書かれている枕も用いられます。
あと、行司の座布団の前にサイコロ2個と、判定の補助として使う扇を一本置き(これは行司がめいめい用意すればいいですが)、さらに枕の上に蝶を置きます。
蝶は、この会場独特の、専用の箱に入っています。この中から適当な物を選びます。

服装は自由です。ジーンズでも別に何も言われません。平日の夜6時過ぎから行なわれるため、仕事を終えてかけつける人も多く、スーツ姿の人もけっこういるのですが、身なりについては常識的な格好であればいいでしょう。
また、専用の扇は用意されていますので、自前の扇をまだ購入していなくても大丈夫です。ただ、扇というのは一本一本クセがあり、それを早く把握することが得点にもつながりますので、上達を目指すのであれば、なるべく自分で5本の扇を買いそろえるとよいでしょう。
集合時刻は午後6時45分。参加費の1500円を支払い、その日のスコアカードを受け取ります。
これは1997年1月の例会から導入されたもので、ボウリングのスコアシートのように1投ごとの得点と累計を記録取役が記入していく形の紙です。普通の「得点控」だと、ハンコを押していくだけなので試合中は楽なのですが、最後に計算するのが大変で時間を食ったりミスを招きやすいので、スピーディーに試合をこなす必要がある時には、このスコアシートの方が便利です。
それにあらかじめ各自が名前を記入して提出し、5人以上の何人かをひとまとまりにして何組(4席〜6席の場合が多いです)かに分けられます。
上から春の席、夏の席…に分け、総当たり形式で各自4試合だけ行い、その勝敗と総得点によってその席の勝者1人を決めます。そして、勝ち上がった人による最終トーナメントを行ない、「全段優勝」を決めます。
最近は初参加の方も多く、外国の方が見えることもよくあります。下の写真の時は、フランスの方が8人もいらしてました。

初参加の人は冬の席(人数が少なければ秋の席)にまとめられ、テレビでもよく指導されている其扇庵夢蝶先生が直々にやさしく教えてくださいます。初心者の中にも筋のよい人はいるもので、冬や秋の席から全段優勝してしまう人もたまにいるほどです。
あと、初参加でなく既に振興会の会員として登録した方は、会員証を持参して、その日の4試合の成績をつけていってください。この成績が、段位や級位の申請の際に必要になります。こちらは勝敗は関係なく、点数だけが対象となります。
各席の優勝者には、賞品として豆扇が授与されます。地紙には、それぞれの季節にあった植物などの絵が描かれています。
(以前、テレビ東京の「アド街ック天国」で浅草を特集していた時に紹介されていた人形用着物生地専門の「丸美京屋店」で、小道具として270円で販売している「1寸5分扇子」が同じ物に見えるのですが、今度確認してみます)

また、全段優勝者には扇型をした珍しい賞状と、優勝盾が渡されます。ただし、楯の方は次回の例会に持参して返却しなければなりません。これまで100回以上行なわれてきており、そのたびの優勝者の名前がペナント(かな?)に記されていて、初めての時は感激しました。私はこれまで五回ほど優勝させて頂いてます。
普段、自宅で黙々と練習したり、仲間内で和気藹々と練習している時にはそこそこよい点数が出る人でも、「対外試合」とでもいいましょうか、こうして本場で他の人と試合をすると、けっこう緊張してしまうのか、とたんに当たらなくなってしまうことがあります。
当たっても、「いつもなら夕霧や薄雲になるのに、なぜか扇が離れてしまって花散里にしかならない…」などなど。これは初心者に限らず、ベテランでもしょっちゅう感じていることです。まして春や秋の大会の緊張感といったら…!
いきなり大会に臨んで雰囲気に飲まれてしまい、実力の半分も出せずに敗退してしまうのは悔しいものです。時間が許すようなら、是非この隔月の振興会の例会に参加してみることをお奨めします。
帰りには、いつもおみやげに和菓子が配られます。これを楽しみに参加している人もいるようです。
また、新年の例会では全段戦を行なう代わりに、お正月遊びなど日本の伝統的な遊びを楽しむことになっています。
以前は福笑いとかすごろくをやったそうで、私が覚えている範囲では、
といった遊びを体験させていただきました。
(2005年は「海外版双六」の解説のみ、2011年は「台東区郷土かるた」の解説のみ。2003年、2007年、2008年は時間の関係で省略)
なお、2009年は1月例会にもかかわらず全段戦が行なわれました。これは少なくとも私が参加し始めてからは初のことです。
その後、2010年と2011年も時間の関係でお正月遊びは省略となり、2012年は再び全段戦が行われました。
全段戦が終わった後、表彰式や、段位級位の認許証の授与式があります。
また、春や秋の大会の説明などもこの時に行なわれますので、特に支部を結成している場合は、誰か1人は参加するようにした方が望ましいですね。
終わるのはおおむね9時頃です。
私などは1999年に神奈川県西部に引っ越したもので、その後電車で帰ると日付が変わりそうな時間になってしまうこともありますが、それでも毎回の楽しさからやめられず、1996年からずっと皆勤していました。残念なことに、2002年3月の例会だけは緊急入院したため断腸の思いで欠席してしまったのですが、その後は再び皆勤を続けております。
皆さんもぜひどうぞ! お待ちしております。
(*)
「見番」とは、その地域の芸者さんを管理する事務所のことです。新年会や踊りの会などの行事や稽古場としても使われます。
「三業」とは、料理屋(旅館)・芸妓屋・待合の三業種のこと。
待合というのはいわゆるお座敷で、ここに料理屋から料理が届き、置屋から芸者が派遣されてきます。待合と料理屋の統合されたのが「料亭」で、戦後はこれが一般的です。
浅草三業会館は、昭和30年11月8日に落成した建物だそうです。