珍記録

2003年6月23日付の読売新聞夕刊に、プロ野球の「サイクル安打」の難しさについて述べた記事がありました。なんでも、ノーヒットノーランよりも達成回数が少ないのだとか。その記事の中で印象に残った一文を引用させて頂きます。

サイクル安打は日本野球機構の公式記録集に残る記録だ。記録は積み重ねたものだからこそ重いと言えるが、幸運に思いを巡らすような“快記録”も、プロ野球に味わいをもたらしている。

この「大記録・珍記録」では、主に得点面の記録に注目して集めていますが、この「珍記録」のコーナーで紹介するのは、たまたま得点控の絵図をよく見てないと見逃してしまいそうな記録ばかりです。特に浅草での例会では、得点絵図ではなくスコアシートに点数だけ記入するようになっているので、見過ごすこともよくあるようです。したがって、実際には気づかれないだけで、あちこちで出ているのかもしれません。
こういった記録にその場で気がついたときは、本人や記録取役だけでなく、会場中が楽しい雰囲気に包まれるものです。投扇興の楽しみ方の一つとして、参考にしてください。


10投中の最多種類…10種類

以前の26種類の銘定の時代には、最高でも下に挙げるような「9種類」しか存じ上げなかったのですが、2000年5月から40種類に拡張されたため、特に8点技を中心にバラエティが広がり、この記録も挑戦しやすくなりました。
2002年5月28日の浅草の例会において其扇庵翔遊さんが達成した「10種類」の内訳は、次の通りです。

10種類が出ること自体、私は初めて見たのですが、さらに花散里や手習といった低得点の技を含まず、4点以上の技だけでこれだけの種類が出るのは、おそらく今後もめったにないでしょう。上手な人ほど薄雲や夕霧が2つ以上出たりするものですし、ちょっと間違えれば花散里や末摘花になってしまうからです。
大技が澪標の1つしかないのに、8点技が多かったために70点という高得点につながりました。これが「紅葉賀」や「絵合」を含む10種類だったとしたら、もうちょっと低い得点になっていたことでしょう。

2005年11月5日には、瓦落多連のバンマスさんが次のような10種類を出しました。

こちらは残念ながら花散里が入ってしまいましたが、それでも手習がない10種類というのは素晴らしいですね。

また、2002年10月5日に、瓦落多連の館長へーすけさんが次のような10種類を出しました。

こういう多種類の記録にはまず欠かせない澪標や薄雲、行幸がなかった上に、手習や花散里があったために点数的には奮いませんでしたが、ちょっと珍しい松風と花宴、そして賢木もあったために種類を稼ぐことができました。

2000年4月までの26種類の時代に私の周囲で聞いた範囲では、最高は「9種類」で、しかも手習とかコツリなどを含まない例となると3ケースしか目にしていません。

最近は振興会作成による得点絵図が浅草の隔月例会でも使われなくなり、この「どれくらいバラけたか」という記録が気づかれにくくなってきています。そんな中、2003年5月29日に、新宿のシアターPOOにて「うー」さんが、次のような「9種類」を達成しました。

8投目までは全くダブリがなく、おまけに全てが4点以上という絶好調だったので大記録達成の期待がかかったのですが、9投目に2回目の夕霧が出てしまい、さらに10投目が残念なことに花散里になってしまいました。
その試合を見届けた後、私は帰宅したのですが、その後さらにメールで速報が寄せられまして、それによると同じく「うー」さんが、コツリは含むもののれっきとした「10種類」を達成したそうです。

そしてこの私も、ちょっと不本意な形ながら(^_^;)、2003年11月1日に次のような10種類を達成しました。以前だったら手習が2つかぶっている形ですが、まぁ現在の規定ではこれも10種類には違いありません。


10投中の最少種類…2種類

もっとも、初心者なら「全部手習」とか「手習と花散里のみ」なんてのが当たり前なので、「手習(やコツリ)を含まない」という条件を付けると、こちらもかなり珍しくなります。
花散里を含む3種類というのは何度か目にしましたが、一番すごかったのが

でした。
ほか、「4種類」もたまにありますが、2002年9月2日に寺菴徹さんが達成した

が驚異的でした。

(2008.06.15追記)
長野の桐さんから寄せられた情報によりますと、信州みすず連の例会で岡澤シゲ子さんが

という新記録を出したそうです。よく行幸が須磨や薄雲にならなかったものですね(^_^;)。


同じ技の最多数…8つ (手習・コツリを除く)

こちらはいろいろな評価ができますが、初心者の試合で「10投すべてが手習」というのは別として、意外と珍しいのが「花散里ばかり」の試合。初心者でもベテランでも、「10投全部が花散里だった」というのはできそうでできた試しがありません(というか、聞いたことがありません。情報をお待ちしています)。
「10投中の花散里の数」の最多記録は私の周囲では「8つ」で、3回ほど見ています。あと「花散里7連発!」(1999年10月10日、其扇庵櫻宴さん)なんてのもありました。こういうのはやはり当てるのが精一杯の初心者にできることではなく、「ベテランの不調時」ならではの、ある意味で味わい深い(??)記録ですね。
花散里が多いのは別に珍しいことではないので、下の一覧表では、最高記録の「8つ」のみ掲載しました。

花散里以外では、夕霧が重なるケースがかなりあります。上記のように花散里が8つというのは過去にもありましたが、私は夕霧がよく出るタイプでして、ついに「夕霧8つ」という珍記録を達成してしまいました。その時の他の2投は、行幸と澪標でした。
しかし、なんと言ってもインパクトがあったのは、2002年9月2日の寺菴徹さんの「澪標6つ」です!

個数 重複内容 名前 日付
8個 夕霧(5点) 其扇庵匠胡 2005.09.24
花散里(1点) 其扇庵啓宴 1997.12.20
1998.06.13
其扇庵彩胡 1998.04.04
7個 夕霧(5点) 其扇庵翔遊 1999.09.28
にょい坊 2005.06.11
ふみっち 2006.02.04
石橋 俊彦 2006.09.24
館長へーすけ 2007.06.03
岡澤シゲ子 2008.06.15
行幸(4点) 林 義寿 2007.10.27
6個 澪標(11点) 寺菴 徹 2002.09.02
Domi 2008.09.26
2008.10.25
2008.11.22
2008.11.22
薄雲(8点) 其扇庵啓宴 1995.07.30
須磨(6点) ヘヴン 2008.11.08
夕霧(5点) 其扇庵啓宴 1996.02.17
ほいまろ 1996.03.20
其扇庵恕遊 1997.11.23
其扇庵翔遊 1999.05.29
石橋 俊彦 2005.01.08
にょい坊 2005.04.14
行幸(4点) 其扇庵翔遊 1996.07.20
其扇庵匠胡 2003.11.15
2005.0212
2008.11.02
橋本 暢 2005.02.12

其扇流の試合では、行幸や薄雲もそうですが「夕霧をいかにコンスタントに出せるか」が実力の1つのバロメーターになっている気がします。夕霧さえ3つ4つ出せれば、大抵の試合ではいい勝負ができるものです。「しあわせ家族計画」の宿題であった「15点」にしても、夕霧が出せるようになりさえすれば何てことない点数ですしね。
しかし、他の流派の百人一首形式などでは「蝶が扇の下に隠れると減点」というルールもあり、そこでは全く通用しない話ですが。


最低ラインの最高記録…5点以上

表現が難しいのですが、どういうことかと言いますと、ちょっと調子がよければ「10投が全て蝶に当たり、手習がなかった」ということはたまにあるかと思いますが、それに輪をかけて「最低でも行幸の4点だった」なんてことがあるわけです。もちろん、こういう時は最終得点もかなり高くなります。
このような意味での最高記録は、今のところ「10投全てが5点以上」で、

といったケースがありました。
もしも「全て須磨以上」などのすごい例が出ましたら、ぜひ情報をお寄せください。

(2007.12.08追記)
石橋俊彦さんが、「全て須磨以上」にあと一歩と迫る、非常に惜しい記録を出しました。

この、たった1個の絵合(4点)が出てしまった時は、非常に残念そうでした。さすがに得点は高いですね。しかも唯一の大技が「明石」ですから、たとえ蝶が立ってなくてもちゃんと「須磨」にはなっているあたりがさすがです。

(2008.11.08追記)
さらにヘヴンさんも、「全て須磨以上」にあと一歩と迫る、非常に惜しい記録を出しました。

たった1個の末摘花(3点)がなければ「全て須磨以上」…しかも「末摘花」ってことは「あとちょっとで須磨」だったわけですから、「ほとんど須磨ばっかり」になる所でした。


大技なしで高得点

50点とか60点なんていう高得点には、たいてい一発くらいは澪標などの大技が入っているものですが、中には10点以下の普通の技をコツコツ重ねて高得点に達することもあります。中でもすごかったのが、

でした。68点の記録を出した林義寿さんの場合、10投目の紅葉賀ももうちょっとで柏木になりそうな惜しいものだったそうで、もし柏木になっていたら何と72点になる所でした。
75点のにょい坊さんは、1投目が行幸のあと、2投目から9投目まで実に8投連続で8点技! 最後の朝顔がほんの少しずれて柏木になっていたら…1点しか違わないけど(^_^;)。

これを見てもわかるように、薄雲(8点)というのはかなり有効なのです。それがわかると、たとえ試合で相手に澪標を出されても、「薄雲さえ出せれば大したダメージじゃない」と気分転換を図ることもできるようになります。
まだ聞いたことはありませんが、もし10投全てが薄雲だったら、大技なしでも80点になるわけですからね。
試合が終わって記録取役の読み上げを聞いた時、意外な高得点で勝っていたり、負けたと思っていたのにかろうじて勝っていた、なんてのは、この薄雲が効果的に出ていたことが多いものです。
澪標や早蕨が出ると精神的なダメージが強く残るものですが、薄雲というのは後からじわじわ効いてくるボディーブローのようなもんでしょうか。

さて、こういった試合も1回くらいならありえると思いますが、50点くらいの高得点を大技なしで達成し、しかもそれが4試合続くとなると、これはさらに珍しいのではないでしょうか。
詳細は省きますが、2003年7月3日に浜田真紀さんが「大技なしで40投201点」、2005年6月11日に小藤秀樹さんが「大技なしで40投203点」という記録を達成しています。


両極端な配点

これこそまさしく「珍記録」。澪標が出たりするのはたいていは好調なはずなのですが、10投全体で見ると好調だったのか不調だったのかわからん、というケースです。
なぜか春の伝法院の大会では蓬生(35点)が出ることが多く、過去には「相手は手習が9つもあったのに、たった一発だけ蓬生を出されたばかりに一回戦負けした…」と泣くに泣けない体験をした人もいるくらいですが、そんなに初心者でなくても、次のような珍しい場合もあります。

後者はかなりの実力者で、「10投中澪標3つ」も何度か達成しているくらいの人だったのですが、その割に結果としては40点しか取れなかったので「好調なの?不調なの?」ということになったのでした(^_^;)。しかも行幸が出たのが最後の方だったので、序盤の展開は

だったそうです。ほら、調子いいのか悪いのかわからないでしょ?(笑)

余談:上記の香苗さんの記録が生まれた場所は、なんとハワイです(もちろんアメリカの(笑))。NIFTY-SERVEの「クイズ&パズルフォーラム」のオフとしてみんなでハワイに行った時に、当時仲間内でブレークしたばかりの投扇興をしっかり持参して、みんなで楽しんでいた時の出来事でした。
また、ほいまろさんの記録は、私こと其扇庵匠胡と其扇庵玲鳳の結婚式の日で、その二次会を兼ねて行なわれた大阪での例会で達成されました。

あと、私にも

という間抜けな記録があります(^_^;)ゞ。

そして、2002年10月5日に都内で行なわれた会において、「手習が7つもあるのに70点以上!」という記録が出ました。

この試合の相手は「少女(30点)」を出すなど55点も取っていたのですが、それでも負けてしまいました。

ここまでは手習が多かったために得点が低かったという例でしたが、2005年5月14日、じゃが連のDomiさんが非常に珍しい試合をやってのけました。その内訳は次の通りです。

このページの上の方で「同じ技の最多数」として挙げているように、1試合で花散里が7つもあることがすでに珍しいのですが、しかも手習が全くない上に澪標まであったのに、トータルでは30点。この方は普段は50点近くをコンスタントに出す実力者で、そのため扇が外れるなんてことはさすがになく、でもたまたまツキに恵まれない展開となってしまった感じでした。特に、後半5投は全部花散里という「パーフェクト」でした。
何を隠そう、この試合の相手は私でして、過去に9回対戦して一度も勝てなかったのが、おかげで10戦目にしてようやく勝つことができました(^_^;)ゞ。


その他