散ヽ鳥笠富ヽ散ヽヽ散秋 | 右某 |
散々ヽヽ幸ヽ筑散秋ヽヽ散 | 左某 |
久方の光り長閑き春の日に 賤心なき花のちるらん |
右三十七扇 左三十九扇勝 |
右の圖の如く執筆者記録 するなり(散ハちる花の印)(笠ハみかたの印)(鳥ハちどりの印)(富ハぶし)(秋ハおきの印)(筑ハつくばねの印)上下之に順す 是ハ投扇の勢の變化に因りて扇形及び的玉の落よし起臥を 驗査し圖する所の名目を記録するなり 而して之を記録するにハ一扇毎に左右の當りを記すべし 最初投げたる扇ちる花となり叉十二回の終りに投げし扇初の如くちる花とならバ圖の如點勝の部に入れ褒賞してちる花の歌を記録に書すべしこの歌ハ左右の別なく勝ちし方へ付するなり ちる花に限らず何れなりとも首尾同じき時ハ歌を書することゝ知るべし首尾同じからざれバ尋常の褒賞のみにて歌を書せず 叉十二回終りたるときハ執筆より聲を掛くべし 右に載する點ハ當らざる扇のみにあらず假令ハ扇的臺に當り的玉もその儘ありて向まで達せざる扇(是をあだ浪といふ) 叉ハ的玉かすりて向へ行過ぐるか(是を村雨といふ)或ハ的玉も落ち扇面その傍に落ちたりとも圖する所の名に當らざる扇なれば 悉く無點と成るゆゑ點を書す點は無點の印なり 叉投扇の題歌は重に百首撰を用ゐれども強ち百首撰に限らず源氏等を擇ぶるも可なり